『ソードアート・オンライン プログレッシブ』はいいぞ。

前島賢ラノベ以外と書いたな。アレは嘘だ。今日は『SAO』のスピンオフ、『ソードアート・オンライン プログレッシブ』の話をする。だって「本棚晒し」で取り上げたくても『SAO』シリーズぜんぜん電子化しないんだもん。

さて、よくライトノベルでは日常系や萌え四コマ的な作品をやるのは難しいと言われ、それはそのとおりだと思う。けれど、一方、なろう小説のMMO色の強いヤツの、モンスター倒してレベルあげてスキル解放して装備新しくしてクラスチェンジ先考えてー……みたいな、ほとんどゲーム実況みたいにだらだらディテールが解説されている箇所の「別にたいして面白いわけじゃないけど、まあ、なんか読んでしまうので面白いのだろう」って感じって、ゆるーい萌え四コマをつらつらだらだら読んでいる時と同じような脳波が出ている気がする。

結論、VR-MMO系「なろう」小説は日常系(異論は認める)。

で、その上で『SAOP』。『SAO』本編第1巻におけるデスゲームの舞台となった積層世界アインクラッド。キリトくんたちは長い時間かけて75層までを攻略し、無事に現実へと帰還したわけですが、本書『ソードアート・オンライン プログレッシブ』は、じゃあ具体的にどんな感じだったのよ、ということで1巻・1層ずつ攻略模様を描いていく、そのままやると全75巻かかりますけど川原先生大丈夫すか? こないだ出た4巻でまだ4層ですよ、ってシリーズなのですが、これがまあ、上で書いたMMO小説=日常系ラノベ成分が実によい感じで出ておりまして、本当に「温泉ような、いいあんばいさ」「実家のような安心感」に満ちた小説なんです。『SAOP』はいいぞ。

『アリシゼーション』編とかもなんか大変なことになっててキリトくんも最早、何がキリトくんじゃ! さんをつけろよデコスケェ! という感じになってると思うんですが、こっちだと、そういう英雄キリトさんじゃなくて、

・ただのMMO-RPGマニアで厨二力高めのゲーム脳少年

ぐらいな感じなんですよ。
で、これに、ゲーム知識皆無ゆえにむしろ常識人な我らの正妻アスナさんがパートナーとしてくっついて的確なツッコミをいれながら、ゲームを攻略していく。ほぼシリーズ通して「キリトくん&アスナさんの夫婦漫才で楽しむゲーム実況」みたいなノリです。

何が良いって、つまりここで新たに書かれる出来事はすべて本編ではカットされたものなわけです。つまり、別に読んでも読まなくても「SAO」の本筋には何も関係ないことしか起らないし、起ってはいけないない。「何も起きないことが約束されているシリーズ」。それが『SAOP』。
しかし逆にそのことでキリトくんやアスナさんたちは圧倒的な自由を得ている。生き残るのわかってるので、別にデスゲームの恐怖とかもほぼない。本編じゃないから進めるべき本筋もない。語るべきテーマも消化すべき伏線もほぼほぼない。「物語」という義務から解き放たれたキャラクターたちが、ほとんど二次創作なみの気楽さで、ただただゲームを攻略しているだけの小説。この「だけ」感、この「何も起ってない感」、「読まなくても別にいい」感が、むしろ超よい
(本気で褒めてますよ、念のため)。
(そして、川原先生は大変小説がうまいので、本来、物語が発生しないところをちゃんとエンターテインメントとして起承転結やサスペンス、カタルシスをつくっていて、物語もちゃんと面白いです。念のため、その2)。

なんかこうラノベ読みたいけど波瀾万丈すぎる冒険ものとか疲れて読みたくない。号泣必死の感動ものとかも勘弁。しかしなんかラブコメって感じもしない。そんな時に超おすすめなのが本作。愛すべきキャラクターたちがそこにいれば、別に劇的な何かなんてなくたって……いや、むしろないからこそ、楽しめる。そういう意味で私的に『ソードアート・オンライン プログレッシブ』は日常系ラノベの最高峰であります(異論は認める)。

あ、あとですね、「物語とか割とどうでもいいんでSAOだらだらMMO-RPGしてたい」という本書と同質の欲望をかなえてくれるものに、ゲーム版の『ソードアート・オンライン―ホロウ・フラグメント―』があります(Vitaですが今度PS4でもリメイクされるのでそれを待つのも可)。
MMO-RPGの自分以外のキャラをNPCにして、ひとりでプレイできるようにした「ソードアート・オンライン」疑似体験ゲームという感じで、道を歩いてると「キリトくん暇だったらレベルあげ手伝ってよー」とかアスナさんに声をかけられたり、アスナさんと「スイッチ!」したり、アスナさんが「スタンさせたよ!」したところにスターバーストストリームを炸裂させたり、えんえんレベルあげたり、レアアイテム掘ったりできます。あ、アスナさん以外にもリーファとかシノンとかともちゃんと冒険できます。でも僕はアスナさんが一番好きです。

こちらからは以上です。

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